Origin — 起源


琥珀(アンバー)は、約4,000万年以上前の森林で生まれました。

樹木が分泌した樹脂が、地表に落ち、やがて堆積物の中で固化していったものです。

空気や水を遮断された環境で長い時間を経て、樹脂はゆっくりと化石化しました。

その過程で、透明度や色調、光の反射などが多様に変化し、今日見られる琥珀の姿となりました。

Structure — 構造


琥珀は鉱物ではなく、有機化した樹脂の化石です。

主成分は炭素・水素・酸素からなる天然の高分子化合物で、硬度は2〜3ほど。

時間の経過とともに分子構造が安定化し、光沢をもつ固体へと変わります。

産地や環境によって色は異なり、黄金色から赤褐色、緑がかったものまで多彩です。

Fossilization — 化石化の過程


新鮮な樹脂が地面に落ち、土砂や水に覆われると、酸化や分解が抑えられます。

その後、数千万年の圧力と温度変化によって、樹脂は分子再編を繰り返し、琥珀となります。

内部に閉じ込められた気泡や植物片、昆虫などは、当時の森の記録として貴重な情報を残します。

こうした標本は、古生態学の研究や気候変動の解明にも役立っています。

Scientific Value — 学術的価値


琥珀は、過去の生態系を“そのままの姿”で封じ込めた天然のタイムカプセルです。

特に昆虫を含む標本は、絶滅種の研究や進化の系譜を知る上で重要な資料となります。

また、有機化学的な分析によって、当時の樹種や環境条件も推定することができます。

琥珀は、生命と時間の交差点に立つ科学的・美的な存在です。

In Spinos — 石に残る光として


Spinosでは、琥珀が内に秘めた奥行きを損なわないよう、できるだけ光を遮らないデザインを心がけています。

枠を主張させすぎず、樹脂の層の中に眠る空気や影がそのまま見えるように。

琥珀は、数千万年前の樹木が流した樹脂の記憶であり、ひとつひとつが異なる小さな景色です。

光が通り抜けるたびに浮かび上がる層や気泡を、遠い森の時間を覗くように静かに見つめてほしいと思います。